アリトホシクズ

 テヅカオタクの楽描きと語りとメモ
 http://xia.sub.jp/m/でも日々つぶやき中
<< オサコレ企画ペーパー再録 | main | お前の意思は何色だ ― 舞台『PLUTO』感想 >>
スポンサーサイト
【-】  2016/12/02(Fri)

一定期間更新がないため広告を表示しています

『アトム ザ・ビギニング』第1話
テヅカごと  2014/12/21(Sun)01:54

そろそろ気分も落ち着いてきたので、ここらできちんと感想を書きとめておこうかと。


ええ、実は発売日(12月1日)に鼻息荒く買いに走っていました。
月刊「ヒーローズ」掲載の『アトム ザ・ビギニング』第1話。

もうねー、アトムですよ、アトム。その上、「ザ・ビギニング」ですってよ。

アトムの公式二次創作も21世紀に入ってからは、短編を広げに広げまくってサスペンス長編にまとめ上げた『PLUTO』、もはやパラレルと言っていいほどの改編がロボット対人間の悲劇を濃ゆい味付けで盛り上げていた『青騎士』、児童文学の顔してうっかり罠が仕掛けてあるつばさ文庫版『アトム大使』、アトム本体の存在すらなかなか出てこない遠い未来のお話になっているわらび座舞台版『アトム』……
……などなど既に各種存在していたので、ここに来て何があろうと、もう驚かないのよ?と思っていました、が。

あーそうかそう来たのかー!という感じ。
いや、むしろ、いっそやるならば、そう来なくっちゃなー!という感じ。

私、ネットでの事前発表(※これ)で、最前面にどんと位置する鼻の大きな青年と、後ろにいるネクラかつ偉そうな黒髪青年とを見たときから、ああ、これはお茶の水と天馬の若き日々をやるわけね、ロボット工学の夜明けを夢見て、油まみれ汗まみれ、涙をスパナに落としながら空回りに情熱を燃やす青春の日々を描いてくれるわけね!それってつまり、原作今昔物語ですっ飛ばされた、金髪トム少年から天馬午太郎博士になるまでの空白期間に挑もうという壮大なる公式二次創作ってわけですね!!…と、それはもうワクワクしましたから。

というわけで、第1話の時点から、既に期待の種があちこちにまかれています。
『アトム・ザ・ビギニング』。


始まりで、お茶の水と天馬が大学の同級生というところからすると、既にいっぱしの発明家だったお茶の水と、ぐれて鑑別所行きを繰り返していた天馬トム少年とが同じ年に存在している『アトム大使』(オリジナル版)とは世界線が違う様子。

しかし、二人の所属大学が「練馬大学」というところは、前に天馬のプロフィールについての記事でも書いたように、『アトム今昔物語』(オリジナル版)からある設定なので、まずここから嬉しい。

しかも「国立」ということは、このツリ目下睫毛な天馬午太郎くんもまた、今昔物語トム少年よろしく天涯孤独の身でありながら、「馬力に馬力をかさね」た「ダークホース」として大学に潜り込めた可能性があるのかなー。
いや、どちらかといえばお茶の水ヒロシくんのほうがそれっぽいかな。

何はともあれ、学食のコロッケパンをおいしいと微笑み、くず鉄に囲まれ、バイトで資金を稼ぎながら、高度な人工知能ロボットを造っている苦学生姿がほほえましい。


前に、ケロケロエース版『青騎士』感想でも少し書いたんですが。
原作において、天馬博士が、紛れも無い「天才」属性の狂気も幸福も一身に背負っている人物なのに対して、お茶の水は、善良だけれども「偉大なる凡人」という位置づけである、というのが私の解釈なので、今回のこの『アトム ザ・ビギニング』で、あえて天馬とお茶の水を同学年コンビ設定にすることで、そこの差異が明確に浮き彫りにされてきたらいいな、というのが一つの期待だったりします。

今回の話だけでも、ただの人工知能研究用ロボットに「かっこいい」という理由だけで1000馬力を得意げにつけてやる天馬には、亡き息子の身代わりのはずのロボットになぜか10万馬力と7つの力を搭載する後の天馬博士の面影がちらつきますし。
その改造に「過剰な能力」と言いつつ、いざそのロボットが力を用いて人助けをすれば、目を輝かせて「僕らのシックス……」と名を呼んで感激の涙を流すお茶の水には、目の前のロボットを単純に愛し、慈しみ、その遺骸には号泣する、後のお茶の水博士の表情が垣間見える。

オレサマ系の天才肌で、でもどこか子供っぽくて抜けている天馬を、お人好しで常識人のお茶の水が「自分勝手でうぬぼれ屋で思いやりのカケラもない大馬鹿野郎」とつぶやきながらも、その天才性を誰よりも認め、その子供っぽさこそ大好きだと臆面もなく言ってのけて世話を焼く、そして何だかんだいって天馬も「俺たち天才!」とお茶の水の存在を自分の相棒として受け入れているという、天才コンビものの鉄板とも言うべき絶妙な関係になっているあたりは、同学年という設定ならではですね。

なので、天才だからこそアトムを創り得た男と凡人だからこそアトムを救えた男、原作天馬とお茶の水というアトムを挟んで対峙するこの二人の男を、この設定フィルターを通して、どこまで抽出し、昇華し、掘り下げてくれるかが楽しみだなー。


個人的には、この天馬午太郎くんであれば、ああ、確かに中年になってからもお茶の水とのくだらない賭けを大まじめに守って、ヌカミソ一樽を食っちゃいそうだわーというのをびしばし感じられます。すばらしい。
ビジュアルは、天馬というより『上を下へのジレッタ』門前でない?という気がしなくもないんですが、先ほどうっかり下睫毛と口走ったとおり、手塚マンガの人材豊富な下睫毛系残念ハンサムの系譜に加えたい顔もしています。
このままりっぱにトリ頭の渋中年に育っておくれ。


それにしても、当面のライバル?となるらしき堤兄妹(モリヤ・モトコ=モリアーティ?)のビジュアルが、手塚というより石ノ森っぽく見えるのはなぜなんだろう。

 +

ところで、ちょっと気になっているのが、同誌で掲載されていた作者関係者さん対談でのカサハラテツロー先生のこの発言。
別のメインとなるロボットは出てきます。『A106』という名前なんですけど、このロボットの特徴は、誰からの命令を受けなくても、自律的に『ロボット三原則』を守るようにアルゴリズムが設定されていることなんです。

おお、アトムの前日譚で、ロボット三原則が出てくるのか。
前にも書いたんですが、ロボット法で縛られているアトム世界のロボットと、ロボット三原則をもともと持っているアシモフ世界のロボットとは違う、そのロボット観の違いこそが私としては燃えるポイントなので、そのあたりどう描かれていくのかなあ。そこは次号からのお楽しみか。

ヤング天馬とお茶の水が造っているプロトタイプロボット『A106』(明らかにアトムの語呂合わせ)の人工知能システムの名前が「ベヴストザイン(=意識・自覚)」なので、その人工知能の「意識」をどう解釈するかで、原作アトム的ロボット法式とアシモフ的三原則式、どちらに寄っていくのかが分かれそう。


何はともあれ、「あの大災害」とだけ書かれた導入部といい(今昔物語時間軸で天馬大学生時から逆算すれば、アトムタイムスリップ時のロケット爆発事故に相当するのですが)、表紙とカラー冒頭部分だけに出ている眼鏡っこ(バッグにかけられたスパナには意味ありげに「URAN」の文字!)といい、謎の多い第1話なので、ひとまず第2話までおとなしく待ちたいと思います。

前にも書いたけど、とにかくアトムの公式二次創作では、「アトム」という一つの象徴を通してさまざまな創作者さんの“ロボット”解釈が立ち現れ、それがまた「アトム」という大きな流れに融合していく、それを見られるのが、アトムを原点としたロボット好きとして何よりも楽しみなので、今回も何が飛び出すのかワクワクですよ。


次の話が載る2月号は、正月前倒しで来週発売!ふっふー。
スポンサーサイト
【-】  2016/12/02(Fri)







ALL VIEW
script by web素材配布室