アリトホシクズ

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イリュージョニスト
雑記  2011/04/17(Sun)03:24

「イリュージョニスト」観てきました。

こんなに何ヶ月も前から楽しみで待ち焦がれた映画は久しぶりでしたが、この映画は本当にスクリーンで見られてよかったー!
実写ではなく、アニメーションだからこその醍醐味が贅沢にあふれてました。


以下、感想。(※ネタバレあり)




老手品師タチシェフが見せる、何万回と繰り返してきただろう熟練の所作の美しさ。
一方で、不慣れなバイトのときに見せるおっかなびっくりな動作のおぼつかなさ。
彼の手品と贈り物に、顔を輝かせる少女アリスの息遣い。
初めてはいたハイヒールでぐらぐら歩く足取り。
贈り物が増えるたびに、少しずつ自信を増してゆく仕草。

シンプルなストーリーだからこそ、これら一つ一つ丁寧に描かれた動きのアニメーションが積み重なってあぶり出される体温と切なさに余計重みを感じます。

「ベルヴィル・ランデブー」のとき、触れればしっとり肌に吸いつくような湿り気を含んだアニメーションを描く人だなあと思ったんですが、この「イリュージョニスト」では、その湿り気がスコットランドの風景にまたよく合っていて、銀幕に映しだされる情景の一つ一つ、動きの一つ一つが快く心に染みわたる、充足感に満ちた80分でした。


老手品師と、彼を“魔法使い”と信じる少女との、つかの間の旅と共同生活。
手品師は彼女のために“魔法使い”を演じて贈り物を与え続けるが、やがて……
という筋というと、チャップリンの「街の灯」、もしくは、それを翻案した「おそ松くん/イヤミはひとり風の中」をつい思い出します。
まあ、ここで少女アリスを無垢と見るか無知と捉えるかで、この話の筋への印象が人によって分かれるところだと思いますが。

ただ、チャーリーやイヤミの場合は、少女に出会って“いい人”と誤解されなければ、大変な目に遭うこともなく、そのままのんべんだらりと生きていけたんでしょうが、この「イリュージョニスト」タチシェフの場合は、アリスに出会って“魔法使い”と誤解されようがされまいが、彼(と仲間の芸人たち)が時代の波に流されて退場していくことに変わりはなかったんだろうなあ。

だからこそ、アリスの前で“魔法使い”を演じ続ける彼の努力は哀しく、また成長した彼女に「魔法使いはいない」とみずから告げ、幕を下ろして去っていく彼の決断は尊い。

それによって、いずれは避けられなかった己の手品師人生の幕引きそのものを、一人の少女の成長と人生の転機へと“魔法”のように変幻させる手品を行なったのですから。

だからこそ、タチシェフは、かつて少女の前に“魔法使い”として現れたときと同じ背広、同じコートの同じ姿で汽車に乗って去っていくことができたのかもしれません。
たとえ、ずっと一緒だったウサギとともに手品師であることを手放していたにせよ。


最後に、汽車の中で子供に披露した手品。
このときタチシェフは、かつてアリスと初めて会ったときの石鹸と同じように、子供が落とした短い鉛筆を自分の長い鉛筆と替えてやることはしませんでした。
長い鉛筆は、そのまま彼の手のもとに。
そこに、去りゆく時代への鎮魂歌のようなこの映画の中にあって、どこかほのかに前向きなものを感じるのです。

同じく去っていった芸人仲間たち…最期の酒を呑みほして首を吊ろうとしたピエロは、アリスに差し入れられたシチューをがつがつと食べた後、静かにホテルを旅立ち、そのシチューをつくってとアリスに頼んだ腹話術師は、人形を売り払った後、道端で酒瓶とともにしゃがみこんだ。
そのシチューに入れられたのではと慌てて探した相棒のウサギも、今は横にいない。

それでも彼の人生は、汽車の行き先に続いていくのです。
少なくとも、その長い鉛筆を使うだけの時間は、まだ。


避けられない人生の苦さを受容しつつも、その苦さと営みから生まれるささやかな喜びと哀しみが静かにうたい上げられているアニメーションでした。傑作!


この映画、絵も音楽ももちろんイイんですが、細かな効果音(靴の音など)もすごく丁寧に入れられているので、観られる方はぜひ映画館での鑑賞をオススメします。
(映画館で、こんなに効果音に燃えるのって「メトロポリス」以来だな…)



http://www.lillusionniste-lefilm.com/
△フランス版?公式サイト
 激重ですが、日本語公式より盛りだくさんです。ただし激しくネタバレ。
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